カール・ロジャーズ博士について

カール・ロジャーズについて

85年の生涯を元気に生き抜いた恩師カール・ロジャーズ(1902~1987)。カウンセリングの創始者として世界に知られた偉人と言えます。人類史における貢献は、『成長理論』の提唱者と言うことです。これは、関西大学の在外研究員として在英中に、ロンドンの大英図書館で世界理論大辞典で見つけました。それまで、人類は内面的成長という考え方は持っていなかったと言うことです。

「人類史に貢献されましたね」と話しかけたら、ぱっと赤くなる恩師が目に浮かびます。私は、夫畠瀬稔の留学に同道してカール・ロジャーズと親しくなったのですが、まだ大学院に入学したばかりで、恩師のことを何も知りませんでした。
KNCのホームページが誕生したので、私の体験と理解から、表現しはじめたいと思います。

65才のロジャーズさん

世界的著名人というと何となく老紳士をイメージしてしまいますが、初めて出会ったロジャーズさんは、若者風でした。「アカプルコの海に潜って、戻ったとこなんですよ」。3月の南カルフォルニアは、初夏の暑さで、アロハ風のシャツ姿のロジャーズさんと、スーツに身を固めた私たち夫婦の出会いは、思い出すと笑えます。

ヘレンさんに大歓迎される

まず驚いたのは、『日本人が、赤ちゃんずれでやってきた』と、ものすごく喜んでくださる奥さんの姿でした。1961年に来日された時、歓迎パティーがあると言うので、日本人の奥さん達と知り合えると期待して行ってみたら、女性はヘレンさんだけだったそうです。さらに、日本からやってくる研究者は男だけで、家族は連れてこない。「夫だけが経験を深めたら、夫婦の会話が成り立たないではないか」。
ヘレンさんの内面には日本男性への怒りがあると感じました。

「カールと呼んでほしい」

青天の霹靂は、カールと呼びかけてほしいと言われたことです。研究所が見つけておいてくれたアパートは、研究所から一分で、日常的に顔を会わせることがあったのです。驚いた私は、日本人にはそういうことは出来ないと、必死でお断りしました。ところが、一ヶ月後、同じ場面で「カールと呼んでほしい」と、丁寧に依頼されたのです。私は、ロジャーズさんの本音を感じ、郷に入れば郷に従えという教訓を思い知らされました。

なぜか夫には、カールと呼んでほしいとは言わなかったのです。
言っても無駄だと感じられたのでしょうか。

数千人に語りかけるロジャーズさん

サンフランシスコでアメリカ心理学会があり、新米運転者が恐る恐るあの広いカリフォルニアを走って参加しました。何とか赤ん坊を預け、ホテルで開かれる華やかな学会に驚くばかりでした。ロジャーズさんの講演は、人が集まり、紅潮して汗をかきながら語るのを遠くから見守りました。普段のロジャーズさんとなにひとつ変わらない姿と、講演を聴く人々の幸せそうな姿が印象的でした。

関連書籍

[英和対訳]
『これが私の真実なんだ―麻薬に関わった人たちのエンカウンター・グループ』
カール・ロジャーズ 著/畠瀬稔 監修/加藤久子・東口千津子共訳
 (コスモス・ライブラリー)
1,000円+税
『ロジャーズのカウンセリング(個人セラピー)の実際』
カール・ロジャーズ 著/畠瀬稔 監修/加藤久子・東口千津子 共訳
 (コスモス・ライブラリー)
録音の内容を英和対訳でテキストとしてまとめた。
600円+税
「鋼鉄のシャッター」 -北アイルランド紛争とエンカウンター・グループ
P.ライス著・畠瀬稔+東口千津子訳 (コスモス・ライブラリー)
映画作成のプロセスから詳細、その後までを示したP.ライスの学位論文の邦訳
1,600円+税